米国の研究により、認知症のある高齢者の約25%が、脳機能に悪影響を及ぼす可能性のある高リスクの中枢神経系活性薬を処方されていることが明らかになりました。抗精神病薬、バルビツール酸系薬、ベンゾジアゼピン系薬などのこれらの薬剤は、転倒、せん妄、入院のリスクを上昇させ、特に認知機能障害のある高齢患者においてその影響が顕著であることから、ガイドラインでは使用を控えることが推奨されています。研究では、正常な認知機能を持つ患者と比較して、認知機能障害のある高齢者でこれらの薬剤の処方頻度が高いことも確認されました。
2013年から2021年にかけて、潜在的に不適切な中枢神経系活性薬の処方は19.9%から16.2%へと減少傾向を示しています。特に臨床的に不適切な処方は15.7%から11.4%へと有意に減少しました。しかし、2021年時点でもこれらの処方を受けていた患者の3分の2以上に、臨床的に正当化できる記録がなかったことが明らかになっています。薬剤の種類別では、ベンゾジアゼピン系薬が11.4%から9.1%に、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が7.4%から2.9%に減少した一方、抗精神病薬は2.6%から3.6%へとわずかに増加する傾向が見られました。
認知機能に不安がある方やそのご家族は、処方されている薬剤が本当に適切かどうかを医師と密に相談することが重要です。特に睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬などを服用している場合は、それらが中枢神経系に影響を与える可能性があるため、定期的な見直しが必要です。不適切と判断された場合には代替治療を検討し、リスクを抑えながら薬剤の減量や中止が可能かどうかを医療チームとともに考えることが推奨されます。もの忘れ外来などの専門外来では、このような薬剤の適切性についても総合的に評価することができます。
医師 菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献:Journal of the American Medical Association誌(2026年1月)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校による認知症患者への中枢神経系活性薬処方に関する研究
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