英国で実施された23年間の前向きコホート研究により、中年期における特定の抑うつ症状が、その後の認知症リスクの上昇と強く関連していることが明らかになりました。5,811名の参加者を平均22.6年間追跡した結果、6つの症状が認知症の確固たる指標として特定されました。これらは「自分に自信が持てない」、「問題に直面できない」、「他者への温かさや愛情を感じられない」、「常に神経質で張り詰めている」、「仕事の進め方に満足できない」、「集中力の低下」です。これらの症状を持つ方は、持たない方と比較して29%から51%の認知症リスク増加が認められました。
この研究で特に重要な点は、これら6つの抑うつ症状と認知症の関連が、APOE遺伝子型、心代謝状態、生活習慣要因といった既知の認知症リスク因子とは独立していたことです。つまり、これらの症状は単に他のリスク因子を反映しているのではなく、それ自体が認知症発症の早期マーカーである可能性を示唆しています。60歳未満の方においては、これら6つの症状が中年期のうつ病と認知症リスクの関連性を完全に説明していました。これらの症状は、潜在的な神経変性プロセスの早期段階を反映している可能性があります。
この研究結果は、中年期における抑うつ症状の適切な評価と管理が、認知症予防において重要な役割を果たす可能性を示しています。上記の6つの症状に心当たりがある方は、単なる一時的な気分の落ち込みとして見過ごさず、医療機関での相談を検討することが推奨されます。早期に発見し、適切な介入を行うことで、認知症リスクを低減できる可能性があります。もの忘れ外来などの専門外来では、認知機能だけでなく、精神的健康状態も含めた総合的な評価を受けることができ、個々の状況に応じた予防戦略を立てることが可能です。
医師 菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献:英国ホワイトホールII研究、中年期抑うつ症状と長期的な認知症リスクに関する23年間の前向きコホート研究
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