脳内にはビタミンDを受け取る「受容体」が、海馬をはじめとする広範囲に存在しており、これが適切に刺激されることで、神経細胞のネットワークが維持され、アミロイドβなどの有害物質の排出が促進されることが分かってきました。
大規模な疫学調査では、血液中のビタミンD濃度が低い人は、十分な人に比べて認知症を発症するリスクが約2倍以上も高くなるという衝撃的なデータも示されています。脳にとって、ビタミンDは単なるサプリメントの選択肢ではなく、神経系を正常に機能させるための「基本的なインフラ」なのです。しかし、現代社会では、過度な紫外線対策や外出機会の減少により、多くの人が深刻な「ビタミンD不足」に陥っています。
ビタミンDの最大の特徴は、私たちの皮膚が日光(紫外線)を浴びることで自ら作り出せるという点です。これを「太陽のビタミン」と呼ぶ所以です。
認知症予防の観点から推奨されるのは、1日に15分から30分程度、太陽の光を浴びることです。特に、高齢になると皮膚での合成能力が低下するため、意識的な日光浴が重要になります。「日焼けが気になる」という方は、手のひらを太陽にかざすだけの「手掌日光浴」でも効果があります。また、食事面では、鮭やサンマなどの魚類、きくらげなどのきのこ類に豊富に含まれています。日光浴と食事の「二段構え」で、脳のビタミンD濃度を高く保つことが、神経細胞を保護するための最も低コストで効果的な投資となります。
注意が必要なのは、日照時間が短くなる冬場や、外出が困難な状況にある方です。こうした時期や環境下では、血中ビタミンD濃度が著しく低下し、それに伴って意欲の低下や認知機能の不調(いわゆる冬季うつなど)が生じやすくなります。
脳の画像診断で現状を把握すると同時に、ビタミンDという「脳の活力源」を安定して確保することは、将来のもの忘れを防ぐ上で非常に理にかなっています。明るい光を浴び、脳の神経細胞を内側から輝かせるような生活習慣を送りましょう。
医師 菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献:Littlejohns TJ, et al. Neurology. 2014;83:920-928.
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