米国バロー神経学研究所の研究チームは、高齢者における脳白質病変の増加が、実生活での運転能力の経時的低下を予測することを明らかにしました。この研究では、ベースライン時点で認知症のなかった65歳以上の地域在住高齢者220人を対象に、深層学習を用いたMRI画像の解析により白質病変の体積を定量化し、実生活における長期的な運転行動との関連を検討しました。その結果、白質病変の増加は運転頻度、走行パターンの多様性、運転状況への適応性が低いことと関連しており、これらの指標は経時的に低下速度が速いことが確認されました。
研究では、白質病変の増加が交通事故件数および急ブレーキ使用の増加と関連していることも明らかになりました。特に注目すべき点は、後部領域に白質病変が増加している場合に事故リスクが最も高くなることです。平均5.6年の追跡期間中に、白質病変増加群の17%で認知機能障害が発現しました。これらの関連は、アルツハイマー病のバイオマーカーや病理所見とは独立して認められ、脳小血管病変が付加的に関与する可能性が示唆されています。
興味深いことに、白質病変増加と危険運転との関連は降圧薬使用により減弱しており、特にACE阻害薬で顕著でした。研究者は、血圧降下薬、特にACE阻害薬を使用している方では、脳画像で強い障害が認められていても安全な運転習慣が維持される傾向があり、これらの薬剤が加齢に伴う脳の健康維持を支える可能性があると述べています。もの忘れや運転に不安を感じる方は、脳のMRI検査を含めた総合的な評価を受け、必要に応じて適切な治療や生活習慣の改善を検討することが重要です。
医師 菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献:国際脳卒中学会議ISC 2026、米バロー神経学研究所による白質病変と運転能力に関する研究
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