加齢に伴う難聴は、単に会話が聞き取りづらくなるというだけでなく、脳の健康にまで影響を及ぼし、将来的な認知症やもの忘れのリスクを高める可能性が指摘されています。近年では、難聴を早期に治療し、聴力を回復させることが、認知症の発症リスクを軽減するための重要な戦略となり得ることが注目されています。
難聴になると、脳は音を聞き取るために通常よりも多くのエネルギーを消費しなければなりません。この過剰な脳への負担が、本来認知機能の維持に使われるべき脳の資源を奪ってしまい、結果としてもの忘れの進行を早める可能性があります。また、難聴によってコミュニケーションが困難になると、社会的な交流が減少し、脳への刺激が不足することで、認知症発症のリスクを高めるという「社会的孤立仮説」も提唱されています。
複数の研究で、難聴は認知症の修正可能なリスク要因の一つとして挙げられています。そして、補聴器の使用や手術によって聴力を改善した集団は、そうでない集団と比較して、認知症の発症リスクが低下する傾向が示されました。これは、聴力を回復させることで、脳の負担を軽減し、社会的な交流の機会を再び増やすことができるためと考えられます。難聴を感じ始めたら、早期に専門医の診察を受け、適切な治療や補聴器の調整を行うことが、脳の健康を守るための大切な提唱となります。
医師 菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献:(Hearing loss and cognitive decline: a meta-analysis)
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