肺炎は、特に高齢者において頻繁に見られる呼吸器感染症ですが、その影響は肺だけに留まらない可能性が示唆されています。肺炎による深刻な炎症や低酸素状態が、長期的に脳の健康にどのような影響を及ぼすのか、特にもともと関連が不明確であった認知症との関連について、中国の研究者らがメタ解析(複数の研究結果を統合して分析する手法)を行いました。
この研究では、2024年2月までに公表された複数の医学データベースを網羅的に検索し、成人の肺炎患者における認知症または認知機能低下のアウトカムを報告した10件の研究が対象とされました。
統合解析の結果、肺炎を経験した人は、そうでない人と比較して、将来的に認知症を発症するリスクが有意に高いことが示されました(統合ハザード比:1.738) 。これは、肺炎の罹患が認知症のリスクを約1.74倍高める可能性を示唆しています。ただし、分析対象となった研究間の異質性(結果のばらつき)は大きい(I2=97.1%)ことも報告されています。
さらにサブグループ解析を行ったところ、この関連性は特に高齢者において、より顕著に見られることが明らかになりました。一方で、肺炎の原因となった菌が細菌性か非定型かによるリスクの有意な差は見られませんでした。
研究者らは、この結果を受け、「肺炎から回復した患者、とくに高齢者においては、将来的な認知機能低下の可能性を考慮し、注意深いモニタリングと予防戦略が必要である」と結論付けています 。肺炎という一度の大きな身体的ストレスが、脳の健康にも長期的な影響を及ぼす可能性があり、回復後のケアが重要であることを示す研究結果です。
医師 菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献: Yan Z, et al. Ann Med. 2025;57:2517376.
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