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ウォーキングはペースを速めるほど脳と心臓への効果が大きい|福岡博多の即日MRI・頭痛外来・もの忘れ外来

健康増進におけるウォーキングの強度

ウォーキングが健康に良いことは広く知られていますが、その効果を最大限に引き出すためには、単に歩くだけでなく、「どれくらいの速さで歩くか」という強度が重要であることが、米国の新たな研究で示されました。特に、低所得者層や黒人といった、これまでの研究では十分に調査されてこなかった人々を対象としたこの研究は、ウォーキングの効果が人種や経済状況に関わらず普遍的であることを示唆しており、公衆衛生上、非常に意義深いものです。

この研究では、米国南東部に住む約8万5,000人のデータを、中央値で16.7年という長期間にわたって追跡しました。参加者の日常の歩行を、「ゆっくりした歩行(犬の散歩、職場内での移動など)」と「速い歩行(早歩き、階段を上るなど)」に分け、それぞれの時間が死亡リスクにどう影響するかを分析しました。

その結果、ゆっくりとした歩行は、1日3時間以上というかなりの時間を費やした場合でも、全死亡リスクをわずか4%しか低下させませんでした。これに対し、早歩きは、わずか1日15分行うだけで、死亡リスクを19%も低下させ、1日30分に時間を延ばすと、リスクは23%も低下したのです。この結果は、健康効果を得るためには、運動の「量(時間)」だけでなく、「質(強度)」がいかに重要であるかを明確に示しています。

早歩きが脳と心臓の健康にもたらすメカニズム

なぜ早歩きは、これほど効果的なのでしょうか。早歩きのような中強度以上の有酸素運動は、心臓に適度な負荷をかけ、心拍数を上昇させます。これにより、心臓のポンプ機能が鍛えられ、一度に送り出す血液の量が増加します。また、全身の血管が拡張し、血流が改善することで、脳や筋肉への酸素供給能力も高まります。

こうした心肺機能の向上は、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の予防・改善に直接つながります。これらの生活習慣病は、動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞の最大の危険因子です。つまり、習慣的な早歩きは、脳卒中や心臓病の根源にある動脈硬化そのものを防ぐ効果が期待できるのです。

また、運動によって筋肉から放出される「マイオカイン」と呼ばれる物質の中には、脳の神経細胞を保護し、認知機能を高める作用を持つものがあることも分かってきています。早歩きは、心臓だけでなく、脳の健康を直接的にサポートする可能性も秘めているのです。

日常生活に「早歩き」を取り入れる工夫

この研究結果は、日常生活の中で意識的に歩くペースを上げることが、実行可能で効果的な健康戦略であることを示しています。研究者は、「早歩きを含む、より高強度の有酸素運動を日常生活に取り入れた方が良い」と勧めています。

特別な運動器具やジムに通う時間はなくても、早歩きならすぐに実践できます。例えば、

• 通勤時に一駅手前で降りて、少し速いペースで歩いてみる。

• 昼休みに、オフィスの周りを意識的に早歩きで散策する。

• 買い物に行く際に、いつもより少し大股で、腕を振って歩く。 といった、小さな工夫で十分です。

目標は、まず「1日15分の早歩き」。慣れてきたら、徐々に時間を延ばしていくのが良いでしょう。大切なのは、少し息が弾み、軽く汗ばむ程度の強度を意識することです。ゆっくりとした散歩も心のリフレッシュにはなりますが、脳と心臓の健康を本気で考えるなら、ぜひ日々の歩きに「速さ」という要素を加えてみてください。その一歩一歩が、健康な未来への確実な投資となるはずです。

医師 菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。 

参考文献: Liu L, et al. Am J Prev Med. 2025;69:107738.

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