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あなたの高血圧、原因はホルモン異常かも

高血圧は、脳卒中や心臓病の最大の危険因子です。多くの高血圧は原因が特定できない「本態性高血圧」と診断されますが、実はその中に、治療可能な明確な原因が隠れているケースが少なくないことが専門家から指摘されています。その代表的なものが、ホルモンの異常によって引き起こされる「原発性アルドステロン症」です。

見過ごされている高血圧の原因「原発性アルドステロン症」

原発性アルドステロン症は、腎臓の上にある「副腎」という臓器から、「アルドステロン」というホルモンが過剰に分泌される病気です。アルドステロンには体内の塩分(ナトリウム)を増やし、カリウムを排出する働きがあるため、このホルモンが過剰になると体液量が増え、血圧が上昇します。

米国内分泌学会の新たなガイドラインによると、この病気は決して稀ではなく、一般の高血圧患者さんのうち最大で14%、専門医を受診する患者さんでは最大30%にも上る可能性があるとされています。しかし、多くの患者さんがこの病気の存在を知らず、見つけるための簡単な血液検査さえ受けたことがないのが現状です。

通常の高血圧より高い脳梗塞や脳卒中のリスク

この病気が見過ごされてはいけない最大の理由は、通常の高血圧に比べて、脳卒中や心臓病のリスクが著しく高い点にあります。過去の研究では、原発性アルドステロン症の患者さんは、同じくらいの血圧の本態性高血圧の患者さんと比べて、脳卒中のリスクが約2.6倍、心不全のリスクが約2倍、不整脈のリスクが約3.5倍にもなることが示されています。

複数の降圧薬を飲んでもなかなか血圧が下がらない方や、血中のカリウム値が低いと指摘されたことがある方は、一度この病気を疑ってみる価値があります。原因を特定し、ホルモンの働きを抑える薬や、場合によっては手術といった適切な治療を行うことで、将来の脳梗塞や脳出血といった深刻な事態を回避できる可能性が高まります。

菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。 

参考文献: Adler GK, et al. The Management of Primary Aldosteronism: Case Detection, Diagnosis, and Treatment: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2025 Jul 14. [Epub ahead of print]