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緑茶が脳の健康と認知症予防に貢献する可能性

私たちの日常的な食生活が、将来の脳の健康、特に認知症のリスクにどのような影響を与えるのか、多くの研究が進められています。中でも、日本人に古くから親しまれている緑茶には、脳を保護し、認知機能を維持する働きがある可能性が示唆されています。今回は、日本人を対象とした大規模な調査から見えてきた、緑茶の摂取と認知症リスクの関連について解説します。

緑茶を多く飲む習慣ともの忘れ・認知症リスクの低下の関係

新潟大学が40歳から74歳の日本人約1万4,000人を対象に、12年間という長期間にわたって追跡調査を行った研究では、緑茶を飲む量と認知症の発症リスクとの間に明確な関連が見られました。

その結果、緑茶の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに比べて、認知症を発症するリスクが25%低いことが明らかになりました。さらに詳しく分析すると、緑茶を1日に1杯(約150mL)多く飲むごとに、認知症のリスクが約4.8%ずつ減少するという、摂取量に応じた効果も確認されました。この結果は、年齢、性別、喫煙や飲酒の習慣、他の食事内容などの影響を考慮しても変わらない、独立した関連性でした。

脳の健康を守る緑茶の成分とその働き

緑茶が脳の健康に良い影響を与える理由として、豊富に含まれる「カテキン」などのポリフェノールの働きが考えられます。カテキンには強力な抗酸化作用や抗炎症作用があり、脳細胞がダメージを受けるのを防ぎ、神経を保護する効果が期待されています。日々の生活の中で緑茶を飲む習慣が、知らず知らずのうちに脳を酸化ストレスや炎症から守り、もの忘れや認知機能の低下を防ぐことにつながっているのかもしれません。

また、この研究ではコーヒーの摂取との関連も調査されました。コーヒーにも認知症予防効果が期待されていますが、今回の調査では、緑茶とコーヒーの両方を大量に摂取しても、相乗効果でさらにリスクが下がるという結果は見られませんでした。このことから、どちらかを適度に楽しむことが、脳の健康維持には良いと考えられます。日本の伝統的な飲み物である緑茶を日々の生活に取り入れることが、認知症予防の穏やかで健やかな一助となる可能性を示しています。

菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。

 参考文献: Kaise R, et al. Green Tea Consumption Is Inversely Associated with Dementia Risk in Middle-Aged and Older Japanese Adults: The Murakami Cohort Study. J Nutr Health Aging. 2025;29:100615.