年齢を重ねるとともに、知らないうちに全身の筋肉が減っていく「サルコペニア」。これは単に体力が落ちるだけでなく、転倒や骨折、さらにはさまざまな病気のリスクを高め、ひいては脳の健康にも影響を及ぼす可能性があります。この見過ごされがちな筋肉量の減少を、自宅で簡単にチェックできる方法があることをご存知でしょうか。その鍵は「ふくらはぎ」にあります。
早稲田大学などの研究グループが、40歳から87歳の日本人成人を約8年間にわたって追跡調査したところ、ふくらはぎの周囲長(一番太い部分の太さ)の変化と、腕や脚全体の筋肉量の変化との間に、非常に強い正の相関関係があることを世界で初めて縦断的研究で示しました。
つまり、「ふくらはぎが細くなった」と感じる時、それはふくらはぎだけでなく、全身の筋肉が減少しているサインである可能性が高いのです。専用の機械で測定しなくても、メジャー1本あれば、誰でも自分の筋肉量の変化を簡易的に把握することができます。
このふくらはぎの太さと全身の筋肉量との関連は、60歳未満の中年層でも60歳以上の高齢者でも、また、肥満気味の人でも痩せている人でも、同様に認められました。年齢や体型にかかわらず、ふくらはぎの太さが信頼できる健康のバロメーターになることを示しています。
定期的にふくらはぎの周囲長を測定し、以前より細くなっていないかを確認する習慣は、サルコペニアの早期発見と予防に繋がります。筋肉を維持することは、活動的な生活を送り、社会とのつながりを保つ上で不可欠です。そして、身体を動かし続けることは、脳への血流を促し、認知機能を維持することにも直結します。ふくらはぎのセルフチェックを通じて身体の変化に気づき、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけることが、健康長寿と健やかな脳を保つための第一歩となるでしょう。
菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献: Kawakami R, et al. Longitudinal association between changes in calf circumference and appendicular skeletal muscle mass in Japanese adults. Clin Nutr ESPEN. 2025;68:447-450.