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若い世代にも起こる「原因不明の脳梗塞」

脳梗塞は、一般的に高齢の方に多い病気と考えられていますが、近年、比較的若い世代でも発症するケースが報告されています。 特に、高血圧や喫煙といったはっきりした原因が見当たらない「原因不明の脳梗塞」が、50歳未満の方々の間で増えていることが指摘されています。このような脳梗塞には、まだ解明されていないリスク因子が隠れている可能性があります。

脳梗塞と心のストレスの関連性を探る

こうした背景から、心のストレスが若い世代の脳梗塞に関係しているのではないかという仮説のもと、ヨーロッパで大規模な調査が行われました。 この調査では、原因不明の脳梗塞を発症した患者さんと、脳卒中の経験がない健康な方々の、直近1カ月間のストレスの度合いを比較しました。その結果、脳梗塞を発症した患者さんの方が、健康な方々と比べて、中程度以上のストレスを感じていた割合が高いことが分かりました。

女性の脳梗塞リスクと「中程度のストレス」の特異な関係

この関連を性別で詳しく見てみると、興味深い事実が明らかになりました。女性では、ストレスと脳梗塞のリスクに明確な関連が見られたのに対し、男性ではその関連が見られなかったのです。 特に、極度に強いストレスというよりも「中程度のストレス」を感じている女性で、この関連がはっきりと現れました。食生活や運動習慣、持病などの影響を取り除いて分析しても、この結果は変わりませんでした。

脳梗塞リスクの男女差と社会的な背景

なぜ女性だけにこのような関連が見られるのでしょうか。研究者たちは、女性が家庭や仕事、介護など、社会の中で多くの役割を同時に担うことで、男性よりも強いストレスにさらされていることが多いのではないかと推測しています。 一方で、男性はストレスを感じていても、それを表に出しにくい傾向があるかもしれません。この男女差の背景や、「中程度のストレス」がなぜリスクと関連するのかを解明することが、今後の脳梗塞予防につながると期待されています。

菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。

注)ヘルシンキ大学病院(フィンランド)のNicolas Martinez-Majander氏らの研究(Neurology誌 2024年3月5日掲載)を基に作成しました。