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若年女性の原因不明脳梗塞とストレスとの関連性あり

50歳未満の女性における原因を特定できない脳梗塞と、ストレスとの関連が報告されました。男性ではこの関連が認められないということです

 脳梗塞のリスクは、加齢や性別などの修正不能な因子と、喫煙や高血圧などの修正可能な因子によって規定されることが明らかになっていますが、それらのリスク因子が該当しない原因不明の脳梗塞(cryptogenic ischemic stroke;CIS)もあり、近年、特に若年者のCIS増加が報告されています。これを背景に、若年者のCISにストレスが関与している可能性を想定し、以下の研究を行いました。

脳梗塞患者におけるストレス度合の調査

 研究には欧州の19の医療機関が参加し、18~49歳の初発CIS患者群426人(年齢中央値41歳、女性47.7%)と、性別・年齢がマッチする脳卒中既往のない426人を対象として、過去1カ月間に感じたストレスの程度を10項目の質問で評価し、「低ストレス」、「中ストレス」、「高ストレス」に分類しました。すると、CIS患者は既往のない人々と比較して、中ストレス以上の割合が高く出ました(46.2%対33.3%)。

 次に、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、喫煙、肥満、非健康的食習慣、大量飲酒、運動不足、高血圧、心血管疾患、糖尿病、うつ病、前兆を伴う片頭痛、教育歴)を統計学的に調整した検討を実施しました。その結果、ストレススコアが1点高いごとにCIS発症オッズ比(OR)が1.04(95%信頼区間1.01~1.07)であり、ストレスの強さとCISリスクとの独立した有意な関連が明らかになりました。ストレスの強さ別に解析すると、「中ストレス」は有意な関連が示されましたが、「高ストレス」は非有意でありました。

 性別でみた場合、女性では有意な関連があり、特に「中ストレス」との強い関連が認められました。一方、男性では関連が見られませんでした。

まとめ


ストレスを感じる女性はCISリスクが高く、男性がそうでない理由を理解するにはさらなる研究が求められます。また、「高ストレス」ではなく「中ストレス」がリスクに関連している理由も明らかにする必要があります。それらの解明が脳梗塞予防につながる可能性があるでしょう。

 また、男性よりも女性の方がストレスを強く感じている割合が高いことも今回示されました。具体的には、「中ストレス」以上の割合が女性ではCIS患者が57.6%、既往のない人々が41.4%であったのに対して、男性は同順に35.9%、26.0%でした。

このような性差の理由について、「女性は家庭、介護、仕事など複数の役割をこなし、より強いストレスを受けていることが多いのではないか」と推測できます。一方で「男性はストレスを我慢すべきものと考える傾向がある」として、そのことが本研究の結果に影響を及ぼした可能性も否定できません。

菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。

※ヘルシンキ大学病院(フィンランド)のNicolas Martinez-Majander氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に3月5日掲載。