最近のアメリカの研究※で、軽度認知障害(MCI)や初期のアルツハイマー病の方が、生活習慣を改善することで、認知症の進行を抑えられる可能性があることがわかりました。この研究は、信頼性の高い方法である無作為化比較試験として初めて実施されました。
研究は、45歳から90歳までのMCIや初期アルツハイマー病の患者51人を対象に行われました。参加者は2つのグループに分けられました。
生活習慣の改善グループでは、以下のような取り組みを20週間(約5ヵ月間)行いました。
①食事改善
②運動
③ストレス管理
④グループでの相互サポート
生活習慣を改善しなかったグループでは、ほとんどの人で認知機能が低下してしまいました。しかし、生活改善グループでは、記憶力や日常生活の能力が改善した人や、進行が止まった人が多かったのです。
特に、生活改善グループの約7割の人が改善か進行なしという結果でした。一方、生活改善をしなかったグループの約7割は、認知機能が悪化していました。
また、アルツハイマー病の特徴である脳内の「アミロイドβタンパク質」の沈着(たまり具合)についても、生活改善グループでは改善が見られました。
さらに、腸内環境も良くなっていました。脳の健康に良いとされる腸内細菌が増え、逆に悪い影響を与える菌が減っていたのです。
この研究からわかったことは、認知症の進行は生活習慣の改善によって遅らせたり、予防したりできる可能性があるということです。特に大切なことは、
これらを続けることが、脳の健康を守る大きな力になるかもしれません。
日常生活の中で、少しずつ取り入れられることから始めてみると良いでしょう。無理せず、楽しみながら取り組むことが大切です。
菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
※Alzheimers Res Ther誌 2024年6月7日より