身体活動がアルツハイマー病を含む認知症の予防に重要であることは広く知られています。しかし、激しい運動だけでなく、日常生活の中で行われる「家事」のような軽度の身体活動が、脳の健康にどのような影響を与えるのでしょうか。米国カリフォルニア大学の研究者らが、65歳以上の米国高齢者8,141人を対象に、家事の頻度と認知機能の関係を10年間にわたり調査しました。
研究では、2008年から2010年にかけての家事頻度の変化に基づき、参加者を「一貫して高い」「低から高へ変化」「高から低へ変化」「一貫して低い」の4つのグループに分類しました。その後、2010年から2018年にかけての認知機能の変化を追跡しました。
分析の結果、家事の頻度が「一貫して高い」グループと比較して、「高から低へ変化」したグループ、および「一貫して低い」グループでは、その後の認知機能の低下と関連が見られました。
一方で、注目すべきは、家事の頻度が「低から高へ変化」したグループです。このグループは、もともと家事の頻度が高かった「一貫して高い」グループと比較して、認知機能の低下に統計的に有意な差が認められませんでした。
この結果は、高齢期に入ってから家事への関与度を高めた人(低から高へ変化した人)であっても、もともと家事をよく行っていた人と同様に、認知機能の低下を遅らせる効果が期待できることを示唆しています。
この関連性は、性別(男女)や年齢層(65~79歳と80歳以上)にかかわらず、同様に認められました。研究者らは、「高齢期に家事への関与が低い状態から高い状態に移行するか、一貫して高い状態を維持することは、性別や年齢にかかわらず、認知機能の低下を遅らせる可能性がある」と結論付けています。
家事は、単なる作業ではなく、計画を立て、手順を考え、体を動かすという複合的な活動であり、脳と身体の両方にとって良い刺激となります。日々の生活の中で、掃除、洗濯、料理といった家事に積極的に関与し続けることが、認知症予防のための実践的で有効な手段の一つとなるかもしれません。
医師 菊池清志
注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。
参考文献: Wang N, et al. Perm J. 2025 Sep 10. [Epub ahead of print]
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