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CT検査の過剰利用がもたらす将来のがんリスクと脳への影響|福岡博多の即日MRI・頭痛外来・もの忘れ外来

医療被ばくという見過ごされがちなリスク

CT(コンピュータ断層撮影)検査は、体の内部を詳細に画像化できるため、脳卒中やがん、内臓の病気などの診断に欠かせない、非常に有用な医療技術です。しかし、その一方で、CT検査ではX線が使用されるため、放射線被ばくというリスクを伴います。X線は、細胞の遺伝子を傷つける可能性があり、「既知の発がん性物質」として扱われています。

米国ではCT検査の利用が非常に多く、人口1,000人あたり年間約280件もの検査が実施されています。これは世界でもトップレベルの頻度です。このCT検査の「氾濫」とも言える状況が、将来的にどの程度のがん発症リスクにつながるのかを推計した、衝撃的な研究結果が報告されました。

この研究モデルによると、米国では、CT検査に伴う放射線被ばくが原因で、将来的に年間約10万3,000件のがんが発症すると推計されました。これは、米国における年間の新規がん診断数全体の約5%に相当します。つまり、診断されるがんのうち、20件に1件は、過去に受けたCT検査が原因である可能性があるというのです。

日本におけるCT検査の現状と課題

この報告は、対岸の火事ではありません。日本もまた、世界有数のCT保有国であり、検査件数は人口あたりで常に上位に位置しています。国内のデータに基づく推計でも、人口1,000人あたり年間200〜250件前後と、米国に次ぐ高水準で推移しています。この事実を踏まえると、日本においても、医療被ばくによる将来の発がんリスクは、決して無視できない問題であると言えます。

もちろん、この研究は「CT検査を受けるべきではない」と主張するものでは全くありません。脳梗塞が疑われる場合の緊急検査や、がんの精密検査など、CT検査が患者さんの命を救い、適切な治療方針を決定するために不可欠な場面は数多く存在します。その利益が、将来のわずかな発がんリスクをはるかに上回ることは言うまでもありません。

問題なのは、「念のため」「とりあえず」といった、医学的な必要性が必ずしも明確でない安易なCT検査が行われている現実です。研究者は、こうした検査の「過剰利用」が、結果として将来のがん患者を増やしているというトレードオフの構造を、具体的な数字で示したのです。

検査の適正化と被ばく低減への取り組み

この研究が私たちに投げかける課題は明確です。それは、医療者も患者も、CT検査の「利益」と「リスク」を正しく理解し、その必要性を慎重に見極める意識を持つことです。

例えば、症状によっては、放射線被ばくのない超音波(エコー)検査やMRI検査で代替できる場合もあります。また、CT検査が必要な場合でも、撮影範囲を必要最小限に絞ったり、最新の被ばく低減技術を搭載した装置を使用したりすることで、被ばく線量を大幅に減らすことが可能です。

特に、小児は成人よりも放射線に対する感受性が高いため、検査の必要性はより厳密に判断されるべきです。今回の研究推計でも、検査1件あたりのリスクは子供の方が高いとされています。

CT検査は現代医療の強力な武器ですが、諸刃の剣でもあります。その力を最大限に活かし、リスクを最小限に抑えるためには、検査の「適正化」が不可欠です。私たち一人ひとりが、自身の受ける医療に関心を持ち、医師と十分にコミュニケーションをとることが、将来の健康を守る上でますます重要になっています。

医師 菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。 

参考文献: Smith-Bindman R, et al. JAMA Intern Med. 2025 Apr 14. [Epub ahead of print] Tsushima Y, et al. BMC Med Imaging. 2010;10:24.

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