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夏の猛暑がもの忘れや認知機能に影響する可能性を探る

暑さと認知機能の意外な関連性

夏の猛暑が続く中、高齢者の健康管理はますます重要になっています。そんな中、米ニューヨーク大学の研究者が行った興味深い研究が、暑さと脳の健康の関連性を示唆しています。この研究では、猛暑に長時間さらされることが多い高齢者では、記憶力や思考力の低下が早まる可能性が示されました。

この研究は、2006年から2018年にかけて行われた米国の高齢者9,448人のデータを分析したものです。猛暑にさらされる期間が長い人ほど、時間の経過とともに認知機能のスコアが低下する速度が速いことが分かったのです。

猛暑が脳に与える直接的・間接的な影響

では、なぜ猛暑が脳の健康に影響を与える可能性があるのでしょうか。研究者は、いくつかのメカニズムを提唱しています。まず、直接的な影響として、猛暑が一時的に脳の機能を低下させたり、慢性的な熱中症が炎症や脳細胞の損傷を引き起こしたりする可能性が考えられます。また、間接的な影響も無視できません。心臓や脳の健康は密接に関連しており、高血圧や糖尿病などの疾患が脳への血流を妨げることが知られています。猛暑はこれらの疾患を悪化させる可能性があり、結果として認知機能の低下につながることが考えられます。さらに、暑さで睡眠が妨げられたり、外出や社会的な活動が難しくなったりすることも、高齢者の認知機能に影響を与える要因となり得ます。

認知機能の低下を避けるための対策

この研究の結果は、猛暑が認知機能の長期的な低下と関連する可能性を示した初めての事例の一つです。熱波が繰り返される現代において、誰もが自身の脳の健康を守るために、十分な水分補給や涼しい場所での休息など、適切な対策を講じることが大切です。

菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。

参考文献: Eun Young Choi, et al. Journal of Epidemiology and Community Health. 2025 Aug 4.