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「手書き」は脳の複雑な運動。脳全体の活性化に

集中力や記憶力が向上し、認知機能も高められる

最近の研究で、「手書き」という行為が、私たちの脳にとってとても良い効果があることがわかってきました。パソコンやスマートフォンが普及した今、メモやノートを取るときに手書きをする機会が減ってきましたが、実は手書きにはタイピングや入力にはない大切な役割があるのです。

研究によると、手書きは脳のたくさんの部分を活性化させ、記憶力や集中力、考える力(認知機能)を高める効果があることが確認されています。日本を含むアメリカやノルウェーなど、世界中の研究でこの効果が証明されています。

手書きで得られる効果

ペンを持って紙に文字を書くときは、手を動かすだけでなく、文字の形や音を考えながら、注意力や集中力を使います。これは「複雑な脳の運動」と言われ、特に新しい言葉や文字を覚えるときにとても良いトレーニングになります。

実際の研究では、知らない言語の文字を学ぶとき、手で書いて覚えた人は、タイピングした人や文字を見ただけの人よりも、早く文字を覚えたり、思い出したりすることができました。これは脳のいろいろな部分が活発に働いて、情報をしっかり記憶できたからだと考えられています。

手書きは子どもにも大人にも良い習慣

子どもにとっては、脳が発達する時期に手書きを続けることで、記憶力や集中力が高まり、学習効果がアップすることがわかっています。

大人の場合でも、手書きは脳の活性化につながるので、とても良い習慣になります。たとえば、買い物メモや日記、ちょっとした事柄のメモを手書きにするだけでも、脳の健康維持や認知症予防に役立つ可能性があります。実際に、脳波を測定する研究では、手書きをしているときは脳の広い範囲が活発に動いていたのに対し、タイピングのときは限られた部分しか動いていなかったそうです。

手書きのすすめ

日常生活の中で、ぜひ取り入れてほしいのが「手書きの習慣」です。 メモを取る、日記を書く、好きな言葉を書き写す、予定を書く、などちょっとしたことでも十分です。手書きは脳にとってとても良い「運動」や「刺激」になります。スマートフォンやパソコンも便利ですが、あえてペンと紙を使う機会を作って、脳の健康づくりをしてみてはいかがでしょうか。今後の認知症予防にも役立つかもしれません。

菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。

※2024年1月Frontiers in Psychology誌