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運動や食事などの総合的な生活習慣改善で認知機能改善

日本は超高齢社会を迎え、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。こうした状況の中で、神戸大学の研究チームが、65歳から85歳の高齢者を対象に、運動や脳トレ、栄養指導などを組み合わせた「総合的な予防プログラム」が認知症の予防に効果があるかどうかを調べる研究を行いました※。その結果、総合的な予防プログラムを受けた人たちは、記憶力や判断力などの認知機能が明らかに改善したことがわかりました。

総合的プログラムと単一プログラムでの予防グループで分けた

この研究は、兵庫県丹波市で2019年から行われました。対象者は健康診断などで認知症のリスクが高いと判断された65〜85歳の方203人で、ランダムに2つのグループに分けられました。一つは運動・生活習慣管理・栄養指導・認知機能トレーニングを受ける「総合的な予防プログラムグループ(以後「総合G」と表記)」、もう一つは健康に関する情報提供のみを受ける「単一プログラムグループ(以後「単一G」と表記)」です。

総合Gの方は、週1回90分の運動プログラム(有酸素運動や筋力トレーニングなど)に 18か月間参加しました。さらに、定期的に栄養指導を受け、1日30分・週4回の認知機能トレーニング(タブレットを使った脳トレ)も行いました。

総合的プログラムの方が認知機能の結果が良い

18か月後には、総合Gの方は認知機能の総合スコアが有意に改善しました。特に、記憶力や実行機能(物事を計画・実行する力)、情報処理スピードが大きく良くなっていたのです。さらに、運動機能も改善し、転倒リスクを下げる効果も期待できると考えられます。

一方、単一Gの方は、認知機能の低下がみられる人が多く、運動や脳トレ、栄養指導などが認知症予防に重要であることが裏付けられました。

また、この総合的なプログラムは高齢者にとって無理のない内容で、安全性も高く、有害事象はほとんど報告されませんでした。運動への参加率や栄養指導の実施率も高く、多くの方がプログラムに積極的に取り組めていたこともポイントです。

まとめ

この研究からわかることは、認知症予防には薬だけではなく、運動・食事・脳トレなど、日々の生活習慣を整えることがとても重要であるということです。特に、軽い運動や定期的な脳トレは、自宅でも取り入れやすいので、これからの健康づくりに役立てていくと良いでしょう。高齢者の方やそのご家族は、ぜひ参考にしてみてください。

菊池清志

注)本コラムは、情報提供を目的としたものであり、当院・医師の意見・方針を反映したものではございません。

※2024年9月4日「Alzheimers Dement誌」 より